古今和歌集の巻十六巻「哀傷」の和歌一覧まとめ。
巻十六巻|哀傷
| 829 | なく涙雨とふらなむわたり河水まさりなはかへりくるかに |
| 830 | ちの涙おちてそたきつ白河は君か世まての名にこそ有りけれ |
| 831 | 空蝉はからを見つつもなくさめつ深草の山煙たにたて |
| 832 | ふかくさののへの桜し心あらはことしはかりはすみそめにさけ |
| 833 | ねても見ゆねても見えけりおほかたは空蝉の世そ夢には有りける |
| 834 | 夢とこそいふへかりけれ世中にうつつある物と思ひけるかな |
| 835 | ぬるかうちに見るをのみやは夢といはむはかなき世をもうつつとは見す |
| 836 | せをせけはふちとなりてもよとみけりわかれをとむるしからみそなき |
| 837 | さきたたぬくいのやちたひかなしきはなかるる水のかへりこぬなり |
| 838 | あすしらぬわか身とおもへとくれぬまのけふは人こそかなしかりけれ |
| 839 | 時しもあれ秋やは人のわかるへきあるを見るたにこひしきものを |
| 840 | 神な月時雨にぬるるもみちははたたわひ人のたもとなりけり |
| 841 | ふち衣はつるるいとはわひ人の涙の玉のをとそなりける |
| 842 | あさ露のおくての山田かりそめにうき世中を思ひぬるかな |
| 843 | すみそめの君かたもとは雲なれやたえす涙の雨とのみふる |
| 844 | あしひきの山へに今はすみそめの衣の袖はひる時もなし |
| 845 | 水のおもにしつく花の色さやかにも君かみかけのおもほゆるかな |
| 846 | 草ふかき霞の谷に影かくしてるひのくれしけふにやはあらぬ |
| 847 | みな人は花の衣になりぬなりこけのたもとよかわきたにせよ |
| 848 | うちつけにさひしくもあるかもみちはもぬしなきやとは色なかりけり |
| 849 | 郭公けさなくこゑにおとろけは君を別れし時にそありける |
| 850 | 花よりも人こそあたになりにけれいつれをさきにこひむとか見し |
| 851 | 色もかも昔のこさににほへともうゑけむ人の影そこひしき |
| 852 | 君まさて煙たえにししほかまの浦さひしくも見え渡るかな |
| 853 | きみかうゑしひとむらすすき虫のねのしけきのへともなりにけるかな |
| 854 | ことならは事のはさへもきえななむ見れは涙のたきまさりけり |
| 855 | なき人のやとにかよはは郭公かけてねにのみなくとつけなむ |
| 856 | 誰見よと花さけるらむ白雲のたつのとはやくなりにしものを |
| 857 | かすかすに我をわすれぬものならは山の霞をあはれとは見よ |
| 858 | こゑをたにきかてわかるるたまよりもなきとこにねむ君そかなしき |
| 859 | もみちはを風にまかせて見るよりもはかなき物はいのちなりけり |
| 860 | つゆをなとあたなる物と思ひけむわか身も草におかぬはかりを |
| 861 | つひにゆくみちとはかねてききしかときのふけふとはおもはさりしを |
| 862 | かりそめのゆきかひちとそ思ひこし今はかきりのかとてなりけり |